近年、企業施設──研修所・保養所・オフィス・ショールームなど──において、
“体験価値” を軸にした空間デザインが求められています。
かつて企業施設は、単に「業務・研修・滞在を行うための箱」として捉えられていました。
しかし現在は、企業文化・ブランド・働き方のすべてが、空間体験として表現されることが
競争力の一部となっています。
本記事では、企業施設が“体験型空間”を必要とする理由を、
建築 × 展示 × 素材 × 技術の視点から解説します。

1. モノより体験が価値になる時代
DXやリモートワークが進んだ現代、人が「わざわざ訪れる場所」には
必ず“その場でしか得られない体験”が求められます。
研修所であれば、集中や気づきを促す空気感。
オフィスであれば、組織が向かう方向性を感じさせる空間。
ショールームであれば、企業の世界観に集中する仕掛け。
つまり企業施設は、企業文化そのものを体験化する媒体となっています。
2. “体験型空間”の核心は「感情の動き」をとらえる
体験型空間の設計は、単なる内装のデザインではありません。
重要なのは、
人の“心の動き”をデザインの対象にすること。
そのために必要なものは:
- 視線の導線
- 明るさのリズム
- 素材に触れた時の質感
- 音の吸収・反射
- 匂いや空気環境
- 空間の密度・余白
これらが総合的に働いて「体験」が生まれます。
たとえば研修所では、森に向けて抜ける大きな窓や、光が差し込む左官壁が
参加者の集中を深め、記憶に残る時間をつくります。
これは、内装を整えるだけでは生まれません。
建築・素材・光・動線を統合して初めて成立する価値です。
3. 素材が企業の世界観を語る
南の島工房が企業施設で重視するのは、
素材が企業の価値観を物語る空間をつくることです。
たとえば:
- 自然素材を多用する企業なら、環境意識や人への優しさが伝わる空間
- 金属やガラスを使う企業なら、技術力や精度へのこだわりが伝わる空間
- タイルやセラミックを使う企業なら、窯を通して火の文化が伝わる空間
素材は、説明しなくても価値観を伝える「無言の語り部」です。

4. 体験型空間は“投資対効果の高い戦略”
体験価値の高い企業施設は、
結果的に以下の効果を生みます。
- 企業ブランドの確立
- 従業員や役員のエンゲージメント向上
- 採用力の強化(特にZ世代)
- 研修の集中力向上
- 顧客・株主・取引先への信頼性向上
つまり、企業施設の体験設計は
単なるデザイン投資ではなく、“価値を増幅する経営投資”なのです。
5. 南の島工房の視点
私たちは、企業施設を「文化を伝える場所」と捉えています。
- 建築 × 展示 × 素材 × 技術を統合していきます
- 人の心を動かす導線を構成していきます
- 企業の歴史を残していきます
企業施設は、企業の歩む未来や哲学をどう体験として届けるか。
それを形にすることが私たちの役割です。




