企業建築は、多くの場合、「今の会社」に向けて計画されます。
しかし本来、企業建築は未来の会社に向けてつくられるものです。
30年という時間は、企業にとって決して特別ではありません。
- 事業内容が変わる
- 働き方が変わる
- 技術が変わる
- 人が入れ替わる
それでもなお、価値が落ちない建築と、
役目を終えてしまう建築があります。
この記事では、30年後も使われ、語られ、
企業の資産であり続ける建築の条件を整理します。
1|用途に縛られすぎない「骨格」を持つ
価値が落ちない建築の最大の特徴は、
用途変更に耐える骨格を持っていることです。
- 会議室が増えても対応できる
- 展示から研修に用途が変わっても使える
- 人数が増減しても無理がない
これを可能にするのは、設備や間取りではなく、
構造・スパン・天井高さといった建築の基本です。
30年後に評価される建築ほど、「用途を決めすぎない」設計がなされています。
2|企業の“思想”が空間に埋め込まれている
30年後も残る建築は、
時代のデザインではなく、
企業の思想を内包しています。
- 誠実さ
- 丁寧さ
- 人を大切にする姿勢
- 長期視点
これらは、流行の意匠ではなく、空間の振る舞いとして現れます。
- 余白の取り方
- 光の扱い
- 素材の正直さ
- 手仕事の痕跡
思想が空間に組み込まれている建築は、時代が変わっても「古びない」のです。

3|経年変化を前提にしている
価値が落ちる建築は、「完成がピーク」です。一方、価値が落ちない建築は、
時間とともに育つことを前提にしています。
- 傷が味になる素材
- 色が深まる仕上げ
- 使われるほど説得力が増す
自然素材(木・土・左官など)は、この条件を満たしやすい素材です。
30年後に「まだ使いたい」と思えるかどうか。
素材選びの時点で、その答えはほぼ決まっています。
4|設備より「空間の質」に投資している
技術や設備は、30年あれば必ず陳腐化します。
- 空調
- 照明制御
- ITインフラ
これらは更新される前提で考えるべきです。
一方で、
- 天井高さ
- 自然光
- 音の響き
- 風の抜け
といった空間の質は、更新できません。
価値が落ちない建築は、設備ではなく、空間の質にこそ投資しています。
5|メンテナンスが文化として成立している
30年使われる建築には、必ず手入れの思想があります。
- 壊れたら直す
- 汚れたら手を入れる
- 使い続けることを前提にする
これが設計段階から考えられていない建築は、
10年を過ぎたあたりで急激に価値を落とします。
自然素材は、手入れが必要な一方で、
「手をかける意味」が見えやすい。
それが、企業文化として根づくかどうか。
これも、長期価値を左右します。
6|「人の居場所」が更新できる
30年後も価値が落ちない企業建築は、
人の居場所を変えられる余地を持っています。
- 家具で用途が変えられる
- 仕切りで距離感を調整できる
- 一人/複数の居場所が共存する
人の働き方は変わります。
しかし、人が「安心できる条件」は大きく変わりません。
- 音
- 光
- 視線
- 触感
これらを丁寧に設計した建築は、世代を超えて受け入れられます。

7|「企業の時間」が刻まれている
30年後も語られる建築には、
企業の時間が刻まれています。
- 成長の痕跡
- 使われ続けた跡
- 手を入れながら歩んだ歴史
新築当時の完璧さよりも、「どう使われてきたか」が価値になります。
建築が、企業の記憶装置として機能する。これこそが、
価値が落ちない建築の最終条件です。
まとめ|30年後に「選ばれ続ける」建築をつくる
30年後も価値が落ちない企業建築の条件は、
次の点に集約されます。
- 用途に縛られない骨格
- 思想が埋め込まれた空間
- 経年変化を前提とした素材
- 設備より空間の質への投資
- 手入れが文化になる設計
- 人の居場所を更新できる余地
建築は、「今の正解」を形にするものではありません。
企業が歩む時間を受け止める器です。
だからこそ、30年後も価値が落ちない建築は、
経営そのものと深く結びついています。





