先日NHKの美の壺で「土」をテーマにした番組がありました。その中で、左官職人の久住君が出ていました。土と言う素材は奥が深く左官という切り口でもとても30分では終わらない内容です。
今回はこの番組を見た感想と左官の土について基本的な考え方を述べていきます。
1| 左官の魅力について
土壁の魅力は、なんといってもその色です。
さまざまな色があります。採取する場所で色は異なり、また成分も異なります。
塗装の色のような単一の感じではなく、様々な色が入っているので飽きることがないです。
番組の中で久住君が言っていたように人間の作為を表現するのではなく土の力をそのまま表現するという姿勢がとても大切です。建築の空間の中においても、土壁がそのまま表現した空間が良いと感じています。そのため照明で土壁を照らすよりも自然光で見せていくほうがいいです。

2| 左官材としての土は、どんなものか?
敷地の掘削した土は大丈夫でしょうか?
基本的に粘り気のない土は使うことは難しいです。
田んぼの土は作物にとってふさわしい土であるように、塗り壁に適した土は粘性のあるものです。
また、土をそのまま使えるわけではなくふるいにかけるか水に溶かして細かい成分だけを取り出して使用します。
塗り壁は
- 色土
- 砂
- わら
で構成されています。量としては砂が多いです。そのため砂の色もきちんと選ぶ必要があります。基本的に川砂は適さず、山砂を使います。山砂は、以前はすぐに手に入ったものですが、近年は山砂を探すのに苦労しています。「真砂土」と呼ばれている花崗岩の風化敷いた砂は土と相性が良く関西地域ではよくつかわれます。
3| 下地がとても大切
塗り壁は、厚く塗るため下地が重要です。竹小舞のようにタテヨコの格子状の竹を網その上に荒壁を塗り、乾燥してから中塗り、上塗りを仕上げていきます。ボードのようなつるっとした下地にも塗ることはできますが、厚塗りは出来ません。

4| 生土や焼土か
塗り土は生の状態なので、爪を立てれば削れます。一方土を焼くと硬くなり、水に強い素材に変わります。瓦やタイルはその性質を利用して屋根や壁に利用しています。
私は、土は焼いたらその性質が死んでしまうという気持ちでしたが、近年はタイルの良さもわかるようになり、どちらも土の特性であり、適材適所で使用することが最も大切な考えだと思います。
焼土も様々な色に変わりますが、そのコントロールは左官よりも難しく、焼成温度とやくときに酸素を入れるか入れないかによって変わっていきます。陶芸と同じ感覚です。
5| 鏝裁きが仕上げを左右する
土壁の表現は塗る時の道具によって変わります。
通常は鏝を使い平滑に塗っていきます。
まずはフラットにむらなく塗ることが基本です。
そこから素材感を出すためにスポンジでこすったり、大き目な藁を入れてみたりして表現を決めていきます。
土の表現は無限にあり、自然素材の魅力そのものです。
美の壺の中では、久住君は、ハンマーで削って仕上げていました。さすがですね。

6| 土の経年変化を楽しむ
土は弱い素材ですが、太陽の紫外線に強く、経年劣化はありません。一つだけ欠点は雨に弱いということです。室内に限定すれば全く問題ないです。
また使用して多少削られても同じ素材が見えているだけなので違和感はあまりありません。
また塗り替えを考えても削り落として新しい土と足して塗り替えすこともでき、再生することも簡単です。
7| まとめ
土壁の魅力は色です。
土壁には砂を多く使うので色土と同じくらい大切です。
土壁は下地が重要で、厚く塗るため下地に密着してないとだめです。
土をそのまま使うか焼いて使うかは用途によって使い分ける。
土の表現は鏝などの道具が重要です。
土は、劣化することがなく長い間大丈夫です。

