企業施設を訪れたとき、人は驚くほど早く、その会社の印象を決めています。
受付の数秒、空間に足を踏み入れた瞬間に、何かを説明される前に
感じ取ります。
その判断の多くは、ロゴやコピーではなく、
素材の印象によって行われています。
- この会社は堅実そうだ
- 人を大切にしていそうだ
- 誠実だが、少し閉じている
- 開かれているが、軽いなあ
こうした評価は、ほとんど無意識です。
この記事では、企業施設の印象を大きく左右する
木材・土・石という三つの自然素材に焦点を当て、
それぞれがどんなメッセージを発し、
どう選ぶと印象が変わるのかを整理します。
1|企業施設の印象は「説明」より先に決まる
企業施設でよくある誤解があります。
- 「きちんと説明すれば伝わる」
- 「コンセプトシートがあれば理解される」
しかし現実には、
- 説明を読む前に
- 話を聞く前に
印象はほぼ固まっています。
そしてその第一印象をつくる最大の要素が、
素材が持つ“温度”と“重さ”という感覚です。
2|木材が与える印象──「人の気配」と距離感
木材は「近づいていい会社」をつくる
木材が使われた企業施設に入ると、
人は無意識にこう感じます。
- 緊張しすぎなくていい
- 話しかけても大丈夫そう
- 人が中心にある会社
これは、木材が持つ以下の性質によるものだと思います。
- 触れても冷たくない
- 表情にムラがある
- 人の手を感じさせる
木は、企業と人との距離を縮める素材と考えています。
木材選びで印象は大きく変わります。
ただし、「木を使えば柔らかくなる」
わけではありません。
- 明るすぎる木 → 軽く、カジュアル
- 節が強すぎる → 野暮ったい
- 均一すぎる → 壁紙のようなインテリア的な雰囲気
企業施設で重要なのは、木目が主張しすぎないように気を付ける。
木材は、量より“置きどころ”をきちんと決めることでその印象が決まります。

3|土(左官)が与える印象──「あたたかさ」と自然
土の壁は「語らないあたたかさ」をもっています
土や左官壁のある企業施設は、入った瞬間に空気が変わります。
- 音がやわらぐ
- 視線が落ち着く
- 言葉が少なくなる
このとき人は、説明されなくても、理解しようとしなくても
「ちゃんとした会社だ」と感じることでしょう。
土は、なんでも受け入れる包容力を生む素材といえるでしょう。
土を使う企業は「覚悟」を問われる
一方で、土・左官素材は、繊細な素材で
大勢の集まる場所ではあまり使われません。
- 経年変化が出る
- 完璧に均一にはならない
- 施工の質がそのまま表れる
つまり土を選ぶことは、
- 表層のきれいさより
- 本質を取る
という企業姿勢の表明でもあります。
そのため、
- 長く続く会社
- ものづくりの企業
- 品質を重視する企業
を表す素材でもあるといえるでしょう。
4|石が与える印象──「存在感」と硬さ
石は「揺るがなさ」を伝える素材
石が使われた企業施設には、独特の硬さがあります。
- 落ち着いている
- 簡単には変わらなそう
- 時間に耐える
石は、「人の都合で変わらない」、「流行に左右されない」
という印象を与えます。
そのため、
- 企業の基盤
- 企業の歴史
- 信頼性
を象徴する素材として、非常に強い力を持つと考えられます。
石は「全面」より「部分」に使う
ただし石は、使い方を誤ると、
威圧的で冷たさにつながる印象にもなります。
企業施設では、
- エントランスの床
- 基壇
- 要所の壁
など、象徴的な部分使い方が効果的です。
石は、空間全体を支える「基盤」として使うのがよいでしょう。
5|素材は「組み合わせ」で印象が決まる
企業施設の印象は、単一素材ではなく
素材の関係性で決まります。
(1)木 × 土
- 人に近い
- 誠実
- 温度がある
→ 社員・来訪者双方にやさしい空間
(2)土 × 石
- 静か
- 重みがある
- 長期視点
→ ブランド・歴史・品質重視の企業向け
(3)木 × 石
- 人と基盤の両立
- 親しみやすさと信頼感
→ 外部に開かれた企業施設に向く
重要なのは、どれを使うかではなく、どう組み合わせるかです。
6|素材選びでよくある失敗
企業施設でありがちな失敗は、
- 全部盛り
- 雰囲気優先
- 写真映え重視
です。
「木も土も石も使う」でも、理由がない
結果、印象がぼやけることになります。
素材は、企業の人格そのものです。
選びすぎると、人格は曖昧になるように空間も同じです。

まとめ|素材は企業の「無言のメッセージ」
木材・土・石の選び方によって、
- 親しみ
- 信頼
- 硬さ
- 誠実さ など
企業施設の印象は、変ってきます。
どれを選ぶかは、デザインの問題ではありません。
企業が何を大切にしているか
その答えが、素材選びとして空間に現れます。
企業施設とは、企業理念を言葉よりも正確に語る
「無言のメディア」ととらえることができます。
素材選びは、そのメディアの編集方針そのものです。




