Instagramでは、白を基調とした空間や、
いわゆる「ホワイトキューブ」と呼ばれる建築的な表現を投稿しています。
それは流行や記号としての白に惹かれているわけではなく、
白という状態が、空間の在り方を強く規定するからです。
今回は、なぜホワイトキューブが魅力的に感じられるのか、
そして、なぜ私たちは無条件に白を選ばないのかについて、
少し整理して書いてみたいと思います。
1| 白は「光を明るくする装置」である
白い空間の最大の特徴は、
光を均一に、やわらかく拡散させることにあります。
日本建築における障子は、その代表的な例です。
光そのものを見せるのではなく、
一度受け止め、反射させ、
空間全体に行き渡らせる。
白は、光を強めるための色ではなく、
光を調整するための装置だと考えています。
この性質が、白い空間を明るく、
そして静かに感じさせる理由です。

2|白がもたらす「清潔感」と距離感
白は、多くの人にとって清潔感や整然さを連想させます。
それは視覚的な情報が少なく、判断すべき要素が減るからです。
極端に白い空間では、素材の重さや温度感が後退し、
空間は次第に非物質的なものとして認識されます。
美術館の展示空間がホワイトキューブで構成されるのも、
作品そのものの世界観を空間が主張せずに支えるためです。
白は、背景として徹する力を持っています。
3| しかし、素材には必ず「色」がある
一方で、建築に使われる素材には、必ず固有の色があります。
木には木の色があり、土には土の色があり、
石には石の色があります。
自然とつながる建築を考えるとき、
色を消すことが正解になるとは限りません。
大地や天空とつながる感覚は、極端な白や黒ではなく、
その中間にある色の世界の中で立ち上がってくるものだと感じています。
白と黒は抽象の世界であり、私たちが立っている現実の世界は、
その間に広がっています。
4| 無理に白にしない、という選択
そのため私たちは、「白い空間をつくること」を目的にはしません。
まず基準にするのは、素材がもともと持っている色です。
白く見える空間であっても、
実際には
- 大理石の白
- 和紙の白
- 石膏の白
といったように、
素材ごとの違いが必ず存在します。
それらを無視して塗装で一様に白く覆うことは、
素材の情報を消してしまう行為でもあります。
たとえホワイトキューブ的な空間をつくる場合でも、
どの素材の白を基準にするのか。
そこに設計の姿勢が表れると考えています。

まとめ| 白は「選ばれた結果」であるべき
白は、とても強い状態です。
だからこそ、最初から白をゴールに設定するのではなく、
素材・光・用途を丁寧に積み重ねた結果として
立ち上がるものであるべきだと思います。
ホワイトキューブが魅力的に感じられるのは、
そこに何もないからではなく、
空間が語るべきことを、あえて抑えているからです。
私たちは、白を目的にするのではなく、
空間の本質を探った先に白が必要であれば、選ぶ。
その順番を大切にしています。



