建築の現場に設計者が足を運ぶ理由を、
「工事が図面通りに進んでいるかを管理するため」だと考えている人は少なくないです。
しかし、素材建築において設計者が現場に立つ本当の理由は、そこにはありません。
設計者が現場に立つのは、管理のためではなく、判断のためです。
素材建築では、図面が完成した時点で建築が決まっていることはほとんどありません。
むしろ、現場が立ち上がるにつれて、判断すべき情報が次々と現れてきます。
現場とは、設計者が「修正し、整え、決断する場所」なのです。
1| 現場で行っているのは管理ではなく「微調整」
素材建築において、現場で設計者が行っている作業の多くは、
厳密な管理ではありません。
・寸法を一ミリ単位で是正する
・図面との差異を指摘する
・工程を監視する
こうした行為が不要だとはいいません。
しかし、素材建築の質を決めているのは、それ以前の微調整の積み重ねであります。
たとえば、
・壁の位置を数センチ動かす
・天井の高さをわずかに調整する
・開口の見え方を現場で確認し直す
これらは図面上では誤差のように見えるが、実際の空間では、
身体感覚に直接影響する決定的な差となります。
たいていは設備部分の修正が中心になっています。理由は設備図面の配管や配線が線で描かれているからです。本来、配管は太さがあり、排水部分では勾配が必要であり図面での水平部分の表記は、現場では常に修正が必要になります。
設計者が現場に立つのは、「間違いを正す」ためではなく、よりよい状態へと寄せていくためなのです。

2| 敷地は図面よりも複雑で、正直です
敷地の高低差や周辺環境は、図面や測量データによってある程度把握できます。
しかし、実際に現場に立ってみると、図面には表れない地下水や調査では出てこなかった地盤情報が必ず存在します。
・地盤の強度
・草木による見えなかった隣地とのレベル差
・使われなくなった配管や図面に表記されてない配管・配線
こうした要素は、数値ではなく現場で突然現れます。
素材建築では、建物は単体で完結する存在ではありません。
敷地や周辺環境と呼応しながら、空間として成立していきます。
設計者が現場に立つことで初めて、
・視線の抜けが自然か
・地面との関係が無理なくつながっているか
を判断することができる。
現場での修正とは、計画を壊すことではありません。
環境に合わせて、建築を馴染ませていく行為なのです。
3| 図面は2Dであり、空間は3Dである
設計図面は、建築を実現するための重要な道具です。
しかし同時に、あくまで2Dの表現にすぎないという限界を持っています。
平面図・断面図・立面図を重ね合わせても、実際のスケール感、奥行き、重なり、
そして素材の存在感までは、完全には伝わりません。
素材建築では特に、
・素材の表情
・光の回り方
・人の動きと視線
が重なり合うことで空間が成立するため、2D図面と実空間との間には必ずズレが生じます。
そのズレを埋めるために、設計者は詳細図を描き直し、
施工者が作成する施工図へと、必要な情報を丁寧に流していきます。
ここで重要なのは、設計者が施工者に「答え」を渡すことではありません。
判断に必要な情報を共有することです。
4| 躯体工事の段階で、仕上げの判断を始める
素材建築において、仕上げ工事は最後にまとめればよい、
という考え方は通用しません。
なぜなら、仕上げ段階になると業者が一気に増えるからです。
一つ一つの調整が事実上取れなくなるためです。
・壁の表情
・照明や看板サインの位置
・床材のおさまり
これらはすべて、最終的な素材の見え方に直結します。
だからこそ、設計者は躯体工事の段階から、仕上げ工事の詳細を詰めていきます。
この段階で、施工者に対して
「この建築は、どんな空間になるのか」
「どこが一番重要なポイントなのか」
という全体像を共有できるかどうかが、建築の完成度を大きく左右します。
施工者が早い段階で全体像を理解していれば、
各工程での判断が揃い、素材の扱いにも一貫性が生まれます。また施工業者にしてみれば最終ゴールを設計者が表すことで、一つ一つの工程を把握することができるので、天候などによる調整が入っても具体的な変更が施工業者の内部で調整できるからです。
設計者が現場に立つ理由は、後から修正するためではなく、最初から判断の質を高めるためなのです。

まとめ| 設計者の仕事は、判断を先送りしないこと
素材建築における設計者の役割は、管理者でも、監督者でもありません。
それは、空間の質を左右する判断を、適切なタイミングで下し続ける存在です。
判断を現場に委ねすぎてもいけません。かといって、図面だけで決め切ってしまってもいけないです。
設計者が現場に立つことで、
・環境を読み
・空間を感じ
・人の動きを理解し
ながら、建築を少しずつ正しい方向へと導いていくことです。
素材建築において、現場は管理する場所ではない。
専門用語では、設計者が現場で行うことを「管理」ではなく「監理」という言葉で使い分けているように単なる「管理」ではありません。
建築の質を決める判断が、連続して行われる場所なのです。
そして、設計者が現場に立つ理由は、建築を「予定通りにつくるため」ではなく、
建築を「よいものにするため」なのです。
素材建築は、条件や価値観によって成立の仕方が大きく変わります。
まずは、敷地や計画について一緒に整理するところから始めています。
無理な営業や即決を前提としたご提案は行っていません。
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