企業が顧客から自動的に選ばれる時代は終わりました。これからは、“共感される企業” が選ばれる時代です。
その共感を生む手段のひとつが、企業施設の空間設計です。単なるオフィスやギャラリーではなく、訪れる人が自然に企業の世界観を理解し、感情移入できる場をつくることが大切です。
この記事では、自然素材を用いた企業施設がどのように共感を生み、企業価値を高めるかを解説します。
1|企業の世界観を“空間化”する重要性
企業のブランドは言葉やロゴだけで伝わるものではありません。
顧客や社員が実際に触れ、体験することで初めて理解され、共感が生まれます。
企業施設は、その体験の最前線です。
〇 空間体験の影響
- 五感への働きかけ:光・音・香り・触感が企業の印象を形作ります
- 時間の経過による印象:滞在時間が長いほど、企業の価値観が深く染み込んでいきます。
- 無意識のメッセージ伝達:素材や色、質感で企業の誠実さや信頼性を示せることができ、空間そのものが“言語化されない企業のメッセージ”になります。
2|自然素材が共感を生む理由
自然素材──土・漆喰・無垢材──は、人間の感覚に直結して働きます。
① 温かみと安心感
自然素材は、触れた瞬間に温かさを感じ、心理的安全性を生みます。
社員や訪問者は安心感を覚え、空間での体験に集中できます。
② 光の柔らかさと陰影
漆喰や無垢材は光を柔らかく拡散し、陰影を生みます。
均一で無機質な空間とは異なり、奥行きと立体感を感じさせ、企業のイメージの“深み”を表現できます。
③ 音と空気感
土壁は音を適度に吸収し、落ち着いた空気をつくります。
オフィスやギャラリーでの会話や展示物の鑑賞体験を妨げず、空間全体の心地よさを増しまことができます。

3|共感を生む企業施設の設計要素
自然素材を用いた企業施設の設計で、共感を生むためにはいくつかの要素が必要です。
① 企業の価値を象徴する素材選定
企業理念に合った素材を選ぶことが大切です。
例えば、環境やサステナビリティを重視する企業なら、土や漆喰の自然素材は理念と一致します。
② 光と風のデザイン
自然光の取り入れ方、通風経路を計画することで、滞在する人が心地よく感じる空間をつくります。
素材は光の反射や拡散にも影響を与えるため、設計段階での組み合わせが重要です。
③ 空間の余白
余白は“考える時間”や“感情を受け止める時間”を生み出します。
壁や床、什器の配置に余白を残すことで、来訪者は無意識に企業のメッセージを受け取ります。
④ 経年変化を意識した素材計画
土や漆喰、無垢材は使い込むほど味わいが増します。
長期にわたり企業価値を示すことができ、施設を訪れるたびに新しい発見が生まれます。
4|具体的な企業施設の事例
〇 ギャラリー
- 土壁で壁面をつくり、作品を浮かび上がらせる
- 漆喰の天井で光を柔らかく反射
- 砂利の洗い出しの床で温かみを演出
結果として、訪問者は作品だけでなく、企業の理念や価値観も自然に理解できます。
〇 保養所・研修施設
- 土壁や漆喰で湿度を整え、快適な滞在環境を提供
- 自然素材の家具でリラックス空間を形成
- 光と音の計画で、集中や交流を促進
社員や株主などの企業関係者は施設での体験を通じて、企業への共感と帰属意識を強めます。
5|設計者から見た共感を生むポイント
- 統一感のある素材選び
企業メッセージと一致する素材を空間全体で統一。 - 動線の設計
来訪者や社員が自然に施設内を巡り、体験できる動線を確保。 - 光・音・温湿度の調整
自然素材を活かした微細な調整で、心理的安全性と快適性を最大化。
これらを押さえることで、施設は単なる建物から、企業の理念を体感する空間に変わります。

6|企業施設による共感の経済効果
自然素材を活かした空間は、企業に以下の効果をもたらします。
- 顧客のブランド理解が深まる
- 社員や株主のエンゲージメントが向上
- 企業競争力を高める
- 施設訪問自体がPR・マーケティングの手段になる
つまり、共感を生む空間は、短期的な成果だけでなく、長期的な企業イメージの戦略に直結します。
7|まとめ──自然素材でブランドを“体験化”する
企業が共感されるためには、言葉や広告だけでは不十分です。
自然素材を活かした企業施設は、社員や顧客に無意識にブランドを伝える空間をつくり出します。
- 土・漆喰・無垢材を活かして心理的安全性と心地よさを確保
- 光・風・音・温湿度をデザインに組み込み、滞在体験を高める
- 空間の余白と経年変化で、企業イメージの深みと継続性を表現
これらを実現することで、企業は単なる「選ばれる存在」から、“共感される存在” へと変わります。
自然素材の空間は、その変化を最も確実かつ美しく演出するツールなのです。




