設計事務所を選ぶ際、多くの人が最初に見るのは図面です。
- プランが整っている
- 動線が分かりやすい
- 敷地にきちんと収まっている
もちろん、図面は重要です。しかし完成後に後悔が生まれるケースの多くは、
図面そのものが悪かったからではありません。
- 図面では良さそうだった
- 理論的には納得できた
- でも、完成すると「何か違う」
この「何か違う」は、図面からは読み取れない部分に原因があります。
この記事では、図面を見ても分からない設計事務所の実力を、どこで・どう見抜くかを整理します。
1|図面は「最低条件」であって「実力」ではない
まず押さえておきたいのは、図面がきれいであることは、
設計事務所としての最低条件だということです。
- 寸法が整っている
- 動線が破綻していない
- 法規的に問題がない
これは「できて当然」の領域です。
本当の実力差は、図面に描かれていない部分に出ます。
2|実力は「図面の説明の仕方」に現れる
同じ図面を前にしても、設計事務所によって説明の仕方は大きく異なります。
注意したい説明
- 図面の説明を行うだけ
- 機能や面積の説明が中心
- いいことばかり説明する
これは、図面がすべてになっている状態です。
実力がある説明
- なぜこの配置になったかを語れる
- 捨てた案・迷った案の話が出てくる「ここはまだ揺れています」と正直に言う
- 今後に懸念される項目の説明をする
実力のある設計事務所ほど、図面を“決定事項”として扱いません。
図面は、思考の途中経過であり、対話のための道具です。

3|実力は「違和感への反応」で見抜ける
図面を見て、はっきり理由は言えないが「少し違和感がある」
この瞬間こそ、見抜きどころです。
実力が低い対応
- 「図面上は問題ありません」
- 「形の説明だけで施工を説明していない」
- 「使っていけば慣れます」
これは、違和感を感じている状態です。
実力が高い対応
- 「どこが引っかかりますか?」
- 「言葉にならなくても大丈夫です」
- 「別の考え方もあります」
実力のある設計者は、違和感を聞いて納得いくまで説明できることです。
4|実力は「描いていない部分」に出る
図面には描かれていないが、
建築の質を大きく左右する要素があります。
- 光の入り方
- 風の抜け
- 施工のやり方
- 設備の考え方
これらについて質問したとき、
- 明確なイメージで語れるか
- 実体験に基づいた言葉が出てくるか
ここで、設計事務所の実力差がはっきりします。
図面に描けないことをどれだけ想像し、言葉にできるか。これが、非常に重要です。
5|実力は「修正の仕方」に最も表れる
設計プロセスの中で、必ず修正は入ります。
このとき、注意すべき修正
- 要望をそのまま足すだけ
- つじつま合わせの調整
- 全体のバランスが崩れる
これは、設計の芯が弱い状態です。
実力のある修正
- 変更によって失うものを説明する
- 全体の構造から組み直す
- 「変えない部分」を明確にする
実力のある設計事務所ほど、修正のたびに建築の輪郭がはっきりしていて最初と同じように収まっています。
6|実力は「完成後の話ができるか」で分かる
図面段階で、完成後の話がどこまでできるか。
これも重要な判断材料です。
- どのように作るのか
- どこが作りにくいのか
- どこが傷つきやすいか
- どう使われていくか
- どう手入れしていくか
これらを、
- 楽観的にしか語らない
- 触れたがらない
場合は注意が必要です。実力のある設計事務所は、
完成後の不完全さも含めて語ります。

7|実力は「言葉の温度」ににじむ
最後に、とても感覚的ですが、重要なポイントがあります。
それは、話している言葉の温度です。
- 完成する形ばかり話す
- 正解を提示し続ける
- 説得のトーンが強い
こうした場合、建築が「作品」になりやすい。
一方で、
- 迷いを共有する
- 失敗談も話す
- 施工者も含め一緒に考えようとする
こうした姿勢がある事務所は、建築を“共同作業”として扱っています。
これは、図面では絶対に分かりません。
まとめ|実力は「線」ではなく「姿勢」に表れる
設計事務所の実力は、
- 図面の美しさ
- プランの巧みさ
だけでは判断できません。むしろ重要なのは、
- 図面の説明の仕方
- 施工段階のプロセスを含めた作り方
- 描いていない部分への想像力
- 修正時の判断力
- 完成後まで含めた視点
こうした姿勢です。図面は、その姿勢の「結果」にすぎません。
だからこそ、図面を見るだけで判断するのではなく、
図面を前にした対話をよく観察してください。
そこに、設計事務所の本当の実力が、必ずにじみ出ています。







