別荘を訪れたとき、最初の数分で、その建築の本質は身体に伝わります。
- なんとなく肩の力が抜ける
- 呼吸が深くなる
- 言葉が少なくなる
この感覚を、私たちはよく「深呼吸できる」か「気持ちのいい」と表現します。
それは、設備の性能や、広さ、豪華さでは生まれません。
おそらく空間と人との関係によって生まるものと感じます。
そしてそこには常に「素材」が介在しているということです。
この記事では、土と漆喰という自然素材が、なぜ「深呼吸できる別荘」をつくるのか。
その本当の価値を、感覚と設計の両面から整理します。
1|「深呼吸できる」とは、どういう状態か
まず考えたいのは、「深呼吸できる別荘」とはどういう状態なのか、ということです。
それは、
- 空気がきれい
という単純な話ではありません。
深呼吸できる状態とは、
- 身体が警戒を解いてリラックスできる状態
- 周囲に合わせようとしなくていい
- 何もしなくても許されている
そうした心理と身体の両方が緩んだ状態です。
別荘に来ているのに、
- どこか落ち着かない
- 長く居ると疲れる
- 無意識に行動してしまう
こうした感覚があると、呼吸は浅くなります。
建築は、人の呼吸の深さに、確実に影響します。

2|自然素材が「空気」を変えるという誤解
自然素材の話になると、よく次のように言われます。
- 調湿性能が高い
- 揮発性化学物質が少ない
- 身体にやさしい
もちろん、それらは事実です。
しかし、自然素材の本当の価値は、数値化できる性能だけではありません。
土や漆喰の壁に囲まれた空間で感じるのは、
- 空気が「ある」感じ
- 音が吸い込まれる感じ
- 視線が落ち着く感じ
これらは、性能表には書けない価値です。
人は、空気そのものよりも、空気を感じる空間によって、呼吸の仕方を変えます。
3|土と漆喰が「緊張」をほどく理由
ではなぜ、土や漆喰の空間では、人は深呼吸しやすくなるのでしょうか。
理由は、とても単純です。
(1)壁がやさしい
工業製品の壁は、
- 均一
- 完璧
- 変化がない
そのため、体が精神を「整えよう」としてしまいます。
一方、土や漆喰の壁は、
- 微妙に揺らいでいる
- 完璧ではない
- 光で表情が変わる
この不完全さが、人の緊張をほどきます。
「きちんとしなくていい」というメッセージが、壁から伝わるのです。
(2)音がやわらかくなる
深呼吸できる別荘では、音の存在感が違います。
- 声が反響しすぎない
- 物音が刺さらない
- 外部の音を感じる
土や漆喰は、音を完全に消すのではなく、角を丸める素材です。
この音環境が、身体の警戒を下げ、呼吸を深くします。
4|「深呼吸できる別荘」は、何もしなくていい
深呼吸できる別荘には、共通点があります。
それは、何かをしなくても成立すること。
- 眺めなくていい
- 楽しまなくていい
- 充実させなくていい
ただ、そこに居ていい。土と漆喰の壁は、家具や装飾がなくても、空間を成立させます。
だからこそ、
- 使われない部屋
- 余白のある場所
- 何もしない時間
が、無駄になりません。
5|自然素材は自由な気分にさせる
別荘は、ゆったりと流れる時間を体感できます。
- 季節が変わる
- 人が変わる
- 過ごし方が変わる
完成時がピークの工業製品の建築は、時間が経つほど息苦しくなります。
土や漆喰は、
- 色が落ち着く
- 表情が深まる
- 使われた痕跡がなじむ
時間を拒まない素材です。だから、何年経っても、深呼吸ができる。
これは、非常に大きな価値です。
6|「深呼吸できる別荘」は、広さで決まらない
深呼吸できるかどうかは、面積とはほとんど関係ありません。
むしろ、
- 天井が高すぎない
- 視線が定まる
- 背中を預けられる
こうした身体との距離感が重要です。自然素材は、空間と身体の距離を縮めます。
包まれる感覚があるからこそ、呼吸が深くなるのです。
7|別荘における「本当の贅沢」
豪華な設備や、大きな窓、完璧な仕上げ。
それらは、別荘の価値の一部にすぎません。
本当の贅沢は、
- 深く息が吸える
- 何も考えなくていい
- 自分に戻れる
という状態を、何度でも得られることです。
土と漆喰でつくる別荘は、そのための建築です。

まとめ|自然素材は「呼吸の質」を変える
土と漆喰でつくる「深呼吸できる別荘」。
それは、
- 健康のため
- 環境配慮のため
だけの話ではありません。自然素材がもたらす本当の価値は、
人の緊張を解き、時間を取り戻すことです。
別荘とは、非日常を演出する場所というだけではなく、人が人に戻る場所。
「深呼吸できるか空間」ということです。
それこそが、別荘の価値を決める
最も正直な基準です。







