別荘の計画で、よく聞く言葉があります。
- 「もう少し広くした方がいいでしょうか」
- 「やはり最低◯坪は必要ですか」
- 「狭く感じませんか」
しかし完成後、満足度が高い別荘ほど、実は決して大きくありません。
むしろ、
- 小さいのに、なぜか窮屈に感じない
- 滞在していると、広さを意識しない
- 何人かいても落ち着く
そうした別荘には、明確な共通点があります。
それは、面積ではなく「体感」を設計していることです。
この記事では、小さな別荘を無理なく、自然に広く感じさせる
設計の考え方と具体的な手法を整理します。
1|「広さ」は数値では決まらない
まず知っておきたいのは、人が感じる「広さ」は、
床面積とはほとんど比例しないという事実です。
- 同じ20坪でも広く感じる建築
- 30坪あっても窮屈な建築
この差を生むのは、
- 視線の抜け
- 天井との距離
- 空間の連続性
つまり、身体がどう動き、どこを見るかです。
別荘では、日常よりも感覚が鋭くなる分、この差がより顕著に現れます。
2|小さな別荘ほど「部屋」をつくらない
広く感じる小さな別荘の最大の特徴は、
部屋が少ないことです。
- リビング
- ダイニング
- 個室
と機能ごとに区切ると、空間は一気に細切れになります。
一方、広く感じる別荘では、
- 一室多用途
- 役割が重なる
- 境界が曖昧
という構成が多い。
部屋を減らすことで、
- 壁が減り
- 視線が伸び
- 空気がつながる
結果として、面積以上の広がりが生まれます。

3|天井高さは「均一」にしない
小さな別荘で天井をすべて高くするのは、
必ずしも正解ではありません。
重要なのは、高低差をつくることです。
- くぐる場所
- 低く抑えた場所
- ふっと抜ける場所
この差があることで、人は「広がった」と感じます。
茶室がその典型と言えるでしょう。
ずっと高い天井は、次第に当たり前となり、(暖房の効果が薄まります)
また、一度、身体を縮めるからこそ、開いた瞬間が強く印象に残るのです。
4|「視線の抜け」は床より重要
広さの体感を左右するのは、床の広さよりも
視線がどこまで届くかです。
小さな別荘を広く見せる設計では、
- 視線の正面に壁を置かない
- 斜め方向に抜けをつくる
- 奥行きを感じさせる窓配置
が効果的です。
特に、
- 斜めに抜ける視線
- 複数方向への抜け
は、実際の寸法以上に空間を大きく感じさせます。
5|床を増やさず「外」を取り込む
小さな別荘でよくある誤解が、「床面積が足りない」
という考えです。
実際には、床を増やさなくても空間は広がります
その鍵が、外部との連続です。
- 軒下
- デッキ
- 半屋外
これらは、延床面積には含まれません。
しかし体感としては、確実に空間の一部になります。
内と外の境界を曖昧にすると、建築は一回り大きく感じられます。
6|素材を「減らす」と空間は広がる
意外に思われるかもしれませんが、
素材の種類が多いほど、
空間は狭く感じます。
- 床が切り替わる
- 壁の素材が変わる
- 天井が分断される
これらはすべて、
空間を区切るサインです。
小さな別荘では、
- 床は基本1種類
- 壁も系統を絞る
- 天井も連続させる
素材を減らすことで、
- 視覚情報が整理され
- 空間が一体として感じられ
- 広がりが生まれます
特に自然素材は、
連続させるほど効果を発揮します。
7|家具を「置かない前提」で考える
小さな別荘を広く感じさせる設計では、家具の扱いが非常に重要です。
後から置くではなく最初から組み込むことで、
空間の無駄が減ります。
- ベンチ
- 造作収納
- 兼用家具
これらは、
- 床を塞がず
- 視線を止めず
- 行為を誘導する
結果として、空間が整い、広く感じられます。
8|「余白」を削らない勇気
小さな別荘で最も削られやすいのが、何もしない余白です。
- 通路を最小に
- 無駄なスペースをなくす
こうした判断は、体感的な広さを奪います。
- 何も置かない場所
- 立ち止まれる場所
- 視線が泳ぐ場所
これらの余白があることで、
空間に広がりが感じられます。

9|小さな別荘ほど「広く見せようとしない」
最後に、最も大切なことです。
小さな別荘を成功させている人は、
広く見せようとしていません。
小さいことを受け入れ、密度を上げ心地よさを優先する。
結果として、
- 無理がなく
- 落ち着きがあり
- 長く居られる
別荘になります。
広さを狙うと、別荘は住宅になります。
体感を整えると、別荘になります。
まとめ| 小さな別荘は「体感設計」で決まる
小さな別荘を広く見せる設計術とは、
床面積を増やすことではなく
感覚の負担を減らすことです。
- 部屋を減らす
- 高低差をつくる
- 視線を伸ばす
- 素材を絞る
- 外とつなげる
これらを丁寧に積み重ねることで、小さな別荘は、
数字以上に、豊かな場所になります。
別荘とは、広さを誇る建築ではありません。
限られた空間の中で、どれだけ深く、
どれだけ長く、自分に戻れるか。
その価値は、体感を設計できたかどうかで決まります。




