別荘の設計相談で、よく出てくる要望があります。
- 「生活感を出したくない」
- 「収納はできるだけ隠したい」
- 「見えないようにまとめたい」
とても自然な考え方です。
しかし実際には、
この発想こそが別荘を“使いにくく、疲れる場所”にしてしまう
ことが少なくありません。
別荘における収納の正解は、「見せない」ではなく、
「美しく見える状態で存在させる」ことです。
この記事では、なぜ別荘では“隠す収納”が失敗しやすく、
“美しく見せる収納”が成立するのかを、
設計の視点から整理します。
1|別荘は「物が少ない場所」ではない
まず前提として、別荘は決して「物が少ない場所」ではありません。
- 長期滞在用の衣類
- 調理器具や食器
- 薪・アウトドア用品
- 季節ごとの道具
- 都会で普段使わないものを格納
むしろ、日常の住まいより用途が曖昧な物が多くなりがちです。
この状態で「すべてを隠す収納」を目指すと、
- 扉が増える
- 壁が増える
- 動線が分断される
- 1部屋が収納化する
結果として、別荘は一気に窮屈になります。
2|「見せない収納」は、別荘を日常化させる
隠す収納が多い別荘は、使っているうちに
こんな状態になりやすい。
- 開けるのが面倒で出しっぱなし
- どこに入れたか分からない
- 結局、生活感が出る
つまり、隠そうとするほど、管理が重くなるのです。
さらに、収納扉が並ぶ空間は、
- マンション的
- 日常的
- 非日常感が薄い
別荘で求めているはずの「切り替え」が、
空間から消えてしまいます。
3|美しく見える収納は「景色の一部」になる
一方、うまくいっている別荘では、
収納が空間の景色になっています。
- 壁一面の棚
- 低く抑えた収納
- 素材がそのまま見える造作
ここで重要なのは、「物を見せる」ことではありません。
収納の存在が、空間として美しいという状態です。
- 並んでいなくても成立する
- 多少乱れても破綻しない
- 使われてこそ完成する
これが、別荘における理想的な収納です。

4|別荘収納は「余白込み」で考える
美しく見える収納の最大のポイントは、詰め切らないことです。
- 収納量を8割で止める
- 何も置かない段をつくる
- あえて空ける場所を用意する
この余白が、
- 乱れを受け止め
- 季節変化を許し
- 使い方を固定しない
結果として、収納全体を「景色」にします。
満杯の収納は、どんなに隠しても、空間を圧迫します。
5|素材が収納の“印象”を決める
別荘の収納では、素材選びが非常に重要です。
(1)自然素材は、物を受け止める
木・左官・石などの自然素材は、
- 色や形が不揃い
- 表情がある
そのため、多少の物の違いを吸収します。
結果として、
- 生活用品が浮かない
- 無造作でも成立する
「きちんと並べなくていい」という安心感が生まれます。
(2)工業素材は、整頓を強要する
一方、白い化粧板や均一な素材は、
- 少しの乱れが目立つ
- 完璧な配置を要求する
別荘では、この緊張感が滞在の疲れにつながります。
6|収納は「家具」ではなく「建築」としてつくる
別荘で成功している収納の多くは、
- 後から置いた家具
ではなく - 建築と一体の造作
です。
- 壁の厚みの中
- 窓下の低い位置
- 通路と重なる場所
こうした位置に収納を組み込むことで、
- 置いた感じがしない
- 視線を遮らない
- 空間の一部になる
結果として、広さと美しさを同時に保てます。
7|「見せる収納」は、使われて完成する
別荘の収納は、完成時がピークではありません。
- 使われ
- 置かれ
- 少し乱れ
その過程を経て、ようやく馴染みます。
美しく見える収納とは、完璧な状態ではなく、使われた状態
を前提にした収納です。
だからこそ、
- 完璧を目指さない
- 多少の雑さを許す
この姿勢が、別荘にはとても合います。
8|別荘の収納がうまくいく人の共通点
収納で後悔しない人には、共通点があります。
- 物を減らそうとしすぎない
- 管理を簡単にする
- 見えることを恐れない
結果として、
- 使いやすく
- 散らかりにくく
- 空間が落ち着く
別荘は、展示空間ではありません。
暮らしがにじんでいい場所です。

まとめ|別荘の収納は「隠す」より「受け止める」
別荘の収納で本当に大切なのは、生活感を消すこと
ではなく生活を受け止めることです。
- 見せない収納は、管理を増やす
- 美しく見える収納は、滞在を軽くする
自然素材と余白を伴った収納は、多少乱れても成立し
使われるほど馴染み別荘らしさを保つことができます。
別荘とは、整った暮らしを見せる場所ではありません。




