オフィス設計の相談で、近年とくに増えている要望があります。
- 「もっとアイデアが生まれるオフィスにしたい」
- 「社員が主体的に考える空間にしたい」
- 「効率だけでなく、創造性を高めたい」
一方で、実際に完成したオフィスを見渡すと、
- 機能的だが、集中できない
- きれいだが、発想が広がらない
- 長時間いると疲れる
そんな空間も少なくありません。
この記事では、社員の創造性を高めるオフィスとは何かを、
「自然素材」という視点から、
心理・行動・設計の三層で整理します。
1|創造性は「集中」ではなく「揺らぎ」から生まれる
まず前提として、創造性は、
机に向かって集中している時間だけでは生まれません。
多くのアイデアは、集中しているときのほんの一瞬起こる、
- ふと視線を外したとき
- 少し身体が緩んだとき
- 言葉にならない違和感を感じたとき
こうした思考が揺らいだ瞬間に生まれます。
にもかかわらず、
- 均一な照明
- 均一な素材
- 均一な音環境
で構成されたオフィスは、
思考を「正解」に寄せてしまいます。
自然素材は、この均一性を壊す役割を果たします。
2|自然素材が創造性に効く理由
(1)情報量が少ない
工業製品的な内装は、
- 反射が強い
- 均質的である
- コントラストがはっきりしている
そのため、脳は常に情報処理を続けます。
一方、木・土・石などの自然素材は、
- 表情が緩やか
- 境界が曖昧
- 見続けても疲れにくい
結果として、思考の余白が生まれます。
この余白こそが、創造性の土壌です。
(2)「正しく使わなくていい」感覚を生む
自然素材の空間には、
- 完璧である必要がない
- 少し乱れても許される
という雰囲気があります。
これは、
- 失敗を恐れない
- 試してみる
- 言葉にしきれない案を出す
という行為を、心理的に後押しします。
創造性は、安全な未完成の中で育ちます。

3|創造性を高めるオフィスは「機能分離」しすぎない
創造性の高いオフィスでは、
- 集中
- 会話
- 思索
が、きれいに分離されていません。
- 集中していた場所で、会話が始まる
- 移動中にアイデアが出る
- 立ち止まる場所がある
こうした重なり合いが重要です。
自然素材は、
- 音を和らげ
- 視線を分断し
- 境界を曖昧にする
そのため、空間の切り替えを
グラデーションにしていくことが必要です。
4|素材ごとに異なる「創造性への作用」
木材| 発想を「人の側」に引き戻す素材
木のある空間では、
- 会話が柔らかくなる
- 身体感覚が戻る
- 意見が出やすくなる
木は、創造性を個人の感覚から引き出す素材です。
ブレストや初期構想、チームでのアイデア出しと
非常に相性が良い。
土・左官|思考を「深く」する
土壁や左官壁のある空間では、
- 言葉が少なくなる
- 思考が内向きになる
- 熟考が進む
これは、
- 表層的な案を越えて
- 本質を考える
フェーズに向いています。
戦略立案や、コンセプト設計など、
深さが求められる思考と相性が良い素材です。
石|判断に「軸」を与える
石は、
- 重み
- 揺るがなさ
- 時間軸
を感じさせます。石のある空間では、
- 軽い思いつきが減り
- 決断が慎重になる
そのため、
- 最終判断
- 意思決定
- 方針確認
といった場面で、思考を「定着」させる役割を果たします。
(日本では石を仕上げに使うケースは少ないです。)
5|創造性を殺してしまうオフィスの共通点
創造性を高めたいはずのオフィスで、
逆効果になるケースもあります。
- 素材を使いすぎる
- 雰囲気だけを真似る
- 写真映えを優先する
結果として、
- 落ち着かない
- 何をしていいか分からない
- 居場所が定まらない
自然素材は、使えば良いわけではありません。
創造性は、素材の「量」ではなく
配置と関係性で決まります。
6|創造性が高まるオフィスは「説明しなくていい」
創造性の高いオフィスでは、
- 「ここでアイデアを出そう」
- 「ここは集中スペースです」
といった説明が、ほとんど不要です。
- 自然と集まる
- 自然と黙る
- 自然と話し始める
素材と空間が、行為を誘導しているからです。
これは、
- マニュアル
- 運用ルール
働き方の方向性と同時に行う必要があると考えています。
7|創造性とは「結果」ではなく「状態」
最後に、とても重要なことです。
創造性は、
- 常に新しい案が出ることではありません。
- 話せる
- 試せる
- 立ち止まれる
という状態が、日常的に保たれていることです。
自然素材のオフィスは、
- 人を急かさず
- 思考を閉じ込めず
- 身体を置き去りにしない
その結果、創造性が「起きやすい状態」を
つくり続けます。

まとめ|創造性は素材で“育てる”もの
社員の創造性を高めるオフィスとは、
- 奇抜なデザイン
- 特別な設備
ではありません。
- 思考に余白をつくる素材
- 失敗を許す空気
- 深さと軽さの両立
これらを、自然素材によって静かに支える空間です。
- 木は、発想を引き出し
- 土は、思考を深め
創造性は、命令して生まれるものではありません。
社員が安心して考え続けられる状態を
空間がつくれたとき、結果として、
企業の創造性は自然に高まっていきます。




