企業の迎賓施設や接待空間を計画する際、多くの場合、最初に話題に上がるのは
「どれだけ立派に見せるか」という点です。
内装材のグレード、照明の華やかさ、象徴的で分かりやすいデザイン。
企業の顔となる空間だからこそ、
失敗したくないという気持ちが強く働くのは自然なことです。
しかし実際に、来訪者の記憶に残る迎賓施設を振り返ると、
評価されているポイントは意外なほど静かなものです。
「なぜか居心地がよかった」
「自然と会話が弾んだ」
「この会社らしさが、押しつけがましくなく伝わってきた」
こうした感想の背景には、空間にどれだけ“余白”があったか、という共通点があります。
1|余白とは「何もないこと」ではない
余白という言葉は、シンプル、削る、何も置かない
といった意味で使われることが多くあります。
しかし建築における余白とは、単に要素を減らすことではありません。
必要なものだけが、適切な距離感と秩序をもって配置されている状態。
それが、私たちが考える余白です。
・素材の種類が過剰でない
・視覚情報が整理されている
・視線が自然に落ち着く場所がある
迎賓施設では、この「整理された状態」そのものが、
企業の信頼感として伝わります。
空間が語りすぎないからこそ、訪れた人は無意識のうちに安心し、
相手の話に集中できるのです。

2|迎賓施設は「言葉を使わないメディア」
迎賓施設は、企業が言葉を使わずにメッセージを伝える場でもあります。
過剰な装飾や象徴的なデザインは、一見すると分かりやすい印象を与えますが、
同時に「何かを誇示している」という受け取り方も生みます。
一方、余白のある空間は、見る人に解釈を委ねます。
この姿勢そのものが、
「自分たちの価値観に自信がある」
「本質で評価されたい」
という無言のメッセージになります。
商談、採用、パートナーシップなどのどの場面においても、
この“静かな自信”は確実に作用します。
3|余白があると「振る舞い」が整う
迎賓施設に余白があると、空間だけでなく、人の振る舞いも変わります。
歩くスピード
話す声の大きさ
座る姿勢
空間に圧がないことで、人は自然と落ち着いた行動をとるようになります。
結果として、商談は穏やかに進み、対話の質が高まります。
これは装飾や演出では生まれません。
空間の骨格そのものが整っているからこそ起こる現象です。
4|余白は「設計初期」でしかつくれない
重要なのは、余白は仕上げ段階で後から足せるものではない、という点です。
・動線をどう整理するか
・視線がどこで止まるか
・どこを主役にし、どこを引くか
これらはすべて、設計初期の判断で決まります。
迎賓施設ほど、
「何を足すか」よりも
「何をやらないか」を明確にする必要があります。
この判断は、設計者の価値観と経験が最も表れる部分でもあります。
5|素材と余白の関係
余白の質は、素材選びによっても大きく左右されます。
素材の主張が強すぎると、空間は一気に情報過多になります。
私たちは、自然素材を使う場合でも、
「素材を見せる」ことを目的にはしません。
素材は、空間の背景として存在し、
人や対話を引き立てる役割に徹するべきだと考えています。
この考え方が、迎賓施設における余白の深さにつながります。

まとめ|評価され続ける迎賓施設とは
企業の迎賓施設において、豪華さは一瞬で消えます。
一方、余白は、「居心地」「信頼感」「企業姿勢」として
記憶に残り続けます。
建築が語りすぎないことで、企業そのものが語り始める。
それが、長く評価され続ける迎賓施設の条件だと考えています。




