建築の世界では、新しい工法や素材、トレンドが次々に生まれます。
効率的で、分かりやすく、説明しやすい建築。
そうした流れの中で、私たちは一貫して「素材建築」を選び続けてきました。
それは、流行に逆らいたいからでも、懐古的だからでもありません。
素材建築が、建築が本来担うべき役割に最も近い
と感じているからです。
1|素材建築は「選択」ではなく「前提」である
私たちにとって素材建築は、数ある選択肢のひとつではありません。
デザインを考える前に、形を考える前に、
空間をどう感じてほしいかを考える。
その結果として、土・木・石・左官といった素材に行き着く。
それが、私たちの設計の順序です。
素材建築は、意匠の話ではなく、建築の前提条件なのです。
2|人は「理解」より先に「感じて」いる
建築に入った瞬間、人は空間を理解しようとはしません。
まず、落ち着くか。
緊張するか。
居続けられるか。
この判断は、言葉よりも早く、身体感覚によって行われます。
素材建築は、この最初の感覚に直接働きかけます。
だから私たちは、説明で納得させる建築ではなく、
体感で受け入れられる建築をつくりたいと考えています。

3|素材は、建築の「態度」を隠さない
素材の扱い方には、設計者の姿勢がそのまま表れます。
- どこまで丁寧に扱うか
- 見えない部分に手をかけるか
- 経年変化を許容するか
素材建築では、こうした判断がごまかしなく空間に残ります。
だからこそ素材建築は、誠実さが試される建築でもあります。
私たちは、この緊張感から逃げない設計を選び続けています。
4|時間に耐える建築をつくりたい
完成した瞬間が一番美しい建築は、時間とともに価値を失っていきます。
一方、素材建築は、時間を引き受ける建築です。
色が変わり、艶が出て、使われた痕跡が残る。
それらを劣化ではなく、価値の蓄積として受け止める。
私たちは、使われ続けることで深まっていく建築をつくりたい。
そのために、素材建築を選び続けています。
5|素材建築は「急がない建築」である
素材建築には、即効性はありません。
完成した瞬間に強いインパクトを与えることも少ない。
けれど、何度も訪れ、何度も使い、ふとした瞬間に良さが染み出してくる。
素材建築は、人の時間に歩調を合わせる建築です。
短期的な評価よりも、長い関係を選ぶ。その姿勢が、私たちの設計思想です。
6|「素材を使う」のではなく「素材と向き合う」
私たちは、素材を装飾として使いません。
木を貼る。
石を見せる。
土を演出する。
そうした使い方ではなく、素材が持つ性質を理解し、
空間の中でどう振る舞ってもらうかを考えます。
素材と向き合うとは、人と向き合うことに近い。
都合よく扱わず、無理をさせず、役割を限定する。
その関係性が、空間の質を決めます。
7|素材建築は「説明しない建築」である
素材建築は、多くを語りません。理念を掲示しなくても、価値観は伝わる。
ストーリーを語らなくても、姿勢は感じられる。
私たちは、建築が饒舌になることを良いとは思っていません。
沈黙していても、伝わる建築を目指しています。
8|素材建築は、施主との関係を深くする
素材建築は、施主との距離が近い建築です。
変化を共有し、手入れを重ね、時間をともにする。
完成して終わりではなく、関係が続いていく。
この関係性そのものが、建築の価値だと、私たちは考えています。
9|それでも素材建築を選び続ける理由
素材建築は、決して効率的ではありません。
手間もかかる。
説明もしづらい。
即座に評価されないこともある。
それでも私たちは、素材建築を選び続けています。
なぜなら、人が自然体に戻れる空間をつくるために、
これ以上ふさわしい方法をまだ見つけていないからです。

まとめ| 素材建築は、私たちの「設計の原点」である
素材建築は、コンセプトでも、売り文句でもありません。
私たちが建築に向き合うときの原点です。
人の感覚を信じること。
時間を味方につけること。
語りすぎないこと。
私たちはこれからも、素材建築を選び続けます。
それは、建築を、人のそばに取り戻すための選択
だからです。




