自然素材建築は、設計者の“覚悟”が試される/ ごまかしのきかない素材と、向き合い続けるという選択

自然素材建築には、どこか「やさしい」「穏やか」というイメージがつきまといます。

木の温もり。
土の落ち着き。
石の重厚さ。

しかし実際に設計する立場に立つと、自然素材建築は決してやさしい建築ではありません。

むしろそれは、

設計者の覚悟が、もっとも露わになる建築
だと感じています。

1|自然素材は、設計者を守ってくれない

工業製品は、均質で、再現性が高く、失敗を覆い隠してくれます。

一方、自然素材は違います。

  • 表情は均一ではなく
  • 誤差を含み
  • 使い方の癖がそのまま出る

自然素材は、設計者の判断をそのまま空間に残します。

逃げ場がありません。
自然素材は、設計者を守ってくれない素材
なのです。


2|「素材がいいから」は、通用しない

自然素材建築では、よくこう言われます。

「素材がいいから、きっと良い建築になる」

しかし現実には、素材が良いだけでは、空間は成立しません。

  • 量を間違えれば、重くなる
  • 配置を誤れば、うるさくなる
  • 組み合わせを誤れば、雑になる

自然素材は、使い方を誤ると空間の質を簡単に下げてしまいます。

だからこそ、
設計者の判断力が素材以上に問われる
建築になります。


3|覚悟とは「引き算を受け入れること」

自然素材建築では、足し算よりも引き算が重要になります。

素材を信じるということは、素材に語らせすぎないことでもあります。

  • すべてを見せない
  • すべてを説明しない
  • すべてを完成させない

この「やらない決断」は、設計者にとって簡単ではありません。

引き算を受け入れること。
それは、
設計者が自分の表現欲と距離を取る覚悟
でもあります。


4|自然素材は、時間をごまかせない

自然素材建築は、完成時だけを見て成立する建築ではありません。

時間が経てば、必ず変化します。

色が変わる。
艶が出る。
痕跡が残る。

この変化を「想定外」や「劣化」と捉えるか、「設計の延長」と捉えるか。

そこに、設計者の姿勢がはっきりと表れます。

自然素材建築は、
時間に対する覚悟
問う建築なのです。


5|説明できない価値を、引き受けるということ

自然素材建築の良さは、言葉にしづらいことが多い。

「なんとなく落ち着く」
「理由は分からないが、居心地がいい」

これらは、営業的には扱いづらい評価です。

それでも、その曖昧さを価値として引き受けられるか。

数値やスペックですべてを説明しない覚悟。
それもまた、自然素材建築に必要な姿勢です。


6|自然素材建築は、設計者の人格が出る

自然素材を使うと、設計者の人格が不思議なほど空間に現れます。

  • 丁寧さ
  • 忍耐
  • 誠実さ
  • 急がなさ

それらは、図面以上に、素材の扱い方に現れます。

だから自然素材建築は、
設計者の人間性が問われる建築
でもあります。


7|楽な道ではないから、選び続ける意味がある

自然素材建築は、効率的ではありません。

コスト調整も難しく、施工管理も手がかかり、説明にも時間がかかる。

それでも、なぜ続けるのか。

それは、人が自然体に戻れる空間をつくるために、

この方法以上に誠実な道を、私たちはまだ見つけていないからです。


8|覚悟がある建築は、静かに伝わる

覚悟をもってつくられた建築は、饒舌ではありません。

派手でもなく、分かりやすくもない。

けれど、訪れた人には確かに伝わる。

「この建築は、簡単につくられていない」

その感覚が、信頼につながります。


まとめ|自然素材建築は、覚悟を試す鏡である

自然素材建築は、設計者の技術だけでなく、姿勢を映し出す鏡です。

どこまで向き合うのか。

どこで妥協しないのか。

何を大切にしているのか。

そのすべてが、素材を通して空間に残ります。

だから私たちは、自然素材建築を選び続けています。

それは、
設計者としての覚悟を、毎回問い直すため
なのだと思います。

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