素材建築の思想が、最も純粋なかたちで現れる建築は何か。
その問いに対して、私は別荘だと考えています。
なぜなら別荘は、日常の機能や効率から一度距離を取り、
「空間そのものをどう感じるか」が問われる建築だからです。
素材建築が大切にしている「空気感」、「余白」、「身体感覚」。
それらは、別荘という建築において、最もはっきりと輪郭を持ちます。
1| 通常の住宅は「機能」が第一になります
通常の住宅では、
どうしても機能が第一に考えられます。
・家事動線
・収納量
・部屋数
・将来の使い勝手
これらは生活を支えるために欠かせない要素です。日常を成立させるためには、
合理性や効率性が強く求められます。
その結果、空間は「使うための器」として整理され、
余白はできるだけ削られていきます。
これは決して悪いことではありません。住宅という建築において、
機能性が重視されるのは自然な流れです。
しかしその一方で、空間の質や空気感は、
後回しにされがちでもあります。

2| 別荘では「余白」そのものが機能になります
別荘は、通常の住宅とは異なる役割を持っています。
別荘においては、「何をするか」よりも
「どう過ごすか」が重視されます。
予定を詰め込む場所ではなく、何もしない時間を受け止める場所をつくることが必要です。
そのため、別荘では余白のある空間そのものが機能を果たします。
・ただ座っている
・景色を眺める
・光の移ろいを感じる
こうした行為は、明確な用途を持っていません。
しかし、別荘ではそれこそが価値になります。
素材建築が得意とする「空間に意味を与えすぎない設計」は、
別荘という建築と非常に相性が良いのです。
3| 別荘に求められるのは、空気感としての居心地です
別荘で過ごす時間は、日常の延長ではありません。
だからこそ、設備の新しさや性能よりも、
空間の空気感が強く印象に残ります。
・入った瞬間の温度
・音の響き方
・素材に触れたときの感覚
・視線の抜けや光の柔らかさ
これらは、数値や仕様では説明しきれない要素です。
素材建築では、自然素材を通じて、こうした感覚的な居心地を整えていきます。
素材が持つ質感や重さ、経年変化を含めた表情が、空間に落ち着きを与えます。
別荘において、この「説明できない心地よさ」こそが、
建築の価値になります。
4| 素材建築には、小さな空間でも開放感があります
素材建築の特徴の一つに、どんなに小さな空間でも、閉塞感が生まれにくい
という点があります。
それは、無理に広さを確保しているからではありません。
・素材の切り替えを抑える
・視線の抜けを丁寧に設計する
・光の入り方を整理する
こうした積み重ねによって、空間に自然な広がりが生まれます。
別荘では、必ずしも大きな面積が必要なわけではありません。
むしろ、小さな空間をどれだけ豊かに感じられるかが重要です。
5| 茶室のように、小さくても世界観は成立します
日本の建築には、茶室という優れた空間があります。
茶室は、決して広い空間ではありません。
むしろ極めて小さな空間です。
それでも、一歩足を踏み入れると、外界とは切り離された
濃密な世界観が立ち上がります。
素材建築が目指しているのは、まさにこの感覚です。
別荘においても、小さな空間であっても、
素材、光、余白の使い方次第で、十分に豊かな体験をつくることができます。
広さではなく、空間の密度が価値を生むのです。
6| 別荘は、素材建築の思想を試される建築です
別荘は、ごまかしが効かない建築でもあります。
日常的な機能や利便性で評価されにくい分、
空間そのものの質が、そのまま体験として返ってきます。
素材の選び方。
余白の取り方。
空間に与えた沈黙の量。
それらすべてが、滞在する人の感覚に正直に作用します。
だからこそ、別荘は
素材建築の思想が最も問われ、最も現れる建築なのだと思います。

まとめ| 素材建築は、別荘という「余白の建築」に向いています
素材建築は、多くを語る建築ではありません。
素材の質感や空間の静けさを通して、使う人に委ねる建築です。
別荘という建築は、その姿勢と非常によく重なります。
機能を満たすためではなく、心と身体をほどくための建築。
別荘こそ、素材建築の思想が最も自然なかたちで表れる場所だと考えています。
そしてその価値は、使い続けるほどに、
静かに、しかし確実に深まっていくのです。
素材建築は、
図面やカタログを見る前に、考えるべきことがいくつもあります。
・この考え方に共感できるか
・自分の計画に当てはまるか
・そもそも素材建築が向いているか
その整理から、一緒に行っています。
具体的な計画がなくても構いません。
「素材建築という考え方が、自分たちに合うかどうか」
その確認からでも、お話しできます。

