住宅に自然素材を取り入れたいと考えたとき、
多くの人はまず「性能」に目を向けます。
断熱性能、調湿性能、耐久性、メンテナンス性。
数値化された指標は比較しやすく、判断材料としても分かりやすいものです。
しかし、自然素材の住宅を実際に体験すると、
そうした数値の比較とは別のところで、
はっきりとした違いを感じる瞬間があります。
それは、室内に入った瞬間の第一印象です。
自然素材の住宅は、カタログ建築とは明らかに異なる「居心地」を持っています。
そしてその違いは、性能表だけでは説明しきれない体感の領域にあります。
1| 自然素材の住宅は、入った瞬間に分かります
自然素材を使った住宅に入ると、多くの人が共通して感じることがあります。
「なんとなく落ち着く」
「空気がやわらかい」
「長く居ても疲れなさそう」
これは、目に見えるデザインや設備の新しさとは別の感覚です。
私自身の感覚になりますが、自然素材の住宅は、
ある一定の湿気を含み、常に呼吸しているような空間だと感じています。
壁や床、天井が、完全に密閉された存在ではなく、
わずかに湿度を受け止め、放出している。
その結果として、空気が極端に乾いたり、
こもったりしにくい状態が保たれます。
この感覚は、数値として測定することはできますが、
実際には身体で感じる印象の方がはるかに強いものです。
住宅における自然素材の価値は、まずこの体感として立ち上がります。

2| 一面だけの自然素材では、居心地は生まれません
自然素材を取り入れる際に、よく見られるのが
「一面だけ自然素材にする」という方法です。
アクセントウォールとして土壁を使う。
一部だけ無垢材を張る方法です。見た目としては分かりやすく、
取り入れやすい方法かもしれません。
しかし、それだけで自然素材の効果が十分に発揮されることは、ほとんどありません。
自然素材が生み出す居心地の良さは、部分的な演出ではなく、
空間全体のバランスによって成立します。
壁は自然素材なのに、床や天井は合板や接着剤を多用した材料で構成されている。
この状態では、空間としての一体感が生まれにくくなります。
自然素材の住宅では、できるだけ全体的に自然素材を使用すること、
そして、合板のように接着剤を多用した材料を避けることが、
居心地の良さにつながると考えています。
3| 居心地は、素材の量と関係しています
自然素材の効果は、「使ったかどうか」ではなく、
どの程度使ったかによって大きく変わります。
一部に使うだけでは、空間全体に影響を与えるほどの力を持ちません。
しかし、床・壁・天井といった空間を構成する主要な要素に自然素材を用いることで、
初めて体感としての違いが現れます。
これは、自然素材が空間の中で「背景」として機能し始めるからです。
目立つ存在ではなく、意識しなくても身体に作用する存在。
その状態になって初めて、自然素材の住宅は、
居心地の良さとして評価されます。
4| 複雑な構成は必要ありません
自然素材の住宅というと、複雑なデザインや、
特別な仕上げを想像されることがあります。
しかし、素材建築においては、複雑な構成は必ずしも必要ではありません。
むしろ、シンプルな構成の方が、素材の良さははっきりと伝わります。
・間取りを整理する
・素材の種類を絞る
・ディテールを抑える
こうしたシンプルな設計の中でこそ、素材の質感や空気感が、
素直に立ち上がります。
素材建築の意義は、奇抜なデザインにあるのではなく、
日常の中で無理なく続く居心地にあります。
5| 素材建築は、職人の技能に支えられています
自然素材の住宅において、忘れてはならないのが
職人の技能の重要性です。
自然素材は、工業製品のように均一ではありません。
素材ごとに癖があり、その日の環境条件によっても振る舞いが変わります。
それを理解し、適切に扱えるかどうかは、
職人の経験と感覚に大きく依存します。
素材を知り、無理をさせず、空間として最も安定する形に仕上げる。
この作業は、マニュアルだけでは身につきません。
素材建築では、設計者の考え方と、職人の技能が噛み合って初めて、
空間としての完成度が高まります。

まとめ| 住宅における自然素材は「体感」で判断すべきです
自然素材の住宅を選ぶ理由は、性能表の数値だけでは説明できません。
むしろ、実際にその空間に身を置き、「どう感じるか」が、
最も正直な判断基準になります。
・長く居ても疲れない
・季節を通して落ち着く
・無意識に深呼吸したくなる
こうした感覚は、住み続けるほどに、価値として実感されていきます。
住宅における自然素材は、性能で競うものではありません。
体感として選ばれる存在です。
そしてその体感こそが、日々の暮らしを支える、
最も確かな指標だと考えています。
素材建築は、
図面やカタログを見る前に、考えるべきことがいくつもあります。
・この考え方に共感できるか
・自分の計画に当てはまるか
・そもそも素材建築が向いているか
その整理から、一緒に行っています。
具体的な計画がなくても構いません。
「素材建築という考え方が、自分たちに合うかどうか」
その確認からでも、お話しできます。

