第2回 INAXライブミュージアムが来場者を伸ばしている理由

多くの企業ミュージアムが来場者数の伸び悩みに直面しています。
展示は整っている。建物も立派である。理念も明確である。
しかし人が増えない。

その中で着実に来場者を伸ばしている施設があります。
それが、INAXライブミュージアムです。

なぜこの施設は伸び続けているのでしょうか。
結論から言えば、展示ではなく「体験の連鎖」を設計しているからです。

1| 展示施設ではなく「活動体」である

多くの企業ミュージアムは、

・企業の歴史を並べる
・代表的な製品を展示する
・年表やパネルで説明する

という構成になりがちです。

理解はできます。しかし、記憶に残りにくい。
「一度行けば十分」という体験で終わってしまいます。

一方でINAXライブミュージアムは違います。
常に何かが起きています。
常に誰かが参加しています。
常に更新されています。

この「活動量」こそが、来場者増加の本質です。

2| 体験型プログラムの厚みが圧倒的

■  自由参加型:モザイクタイル製作教室

予約不要で、ふらっと参加できる。
旅行中でも、偶然立ち寄った来場者でも体験できます。

ここで重要なのは、偶発性を許容していることです。
観光導線の中に自然に入り込める設計になっています。

■ 予約制:泥だんご教室

土に触れる。
磨き上げる。
時間をかけて光らせる。

これは単なるワークショップではありません。
素材企業としての原点を、触覚で体験させる装置です。

製品を説明するのではなく、
素材そのものと向き合わせる。

企業の思想と体験内容が一致している点が、非常に強いのです。

■ 企画展・シンポジウム・コンサート

・企画展に連動したシンポジウム
・クリスマスコンサート
・季節イベント

ミュージアムを「静かな場所」にしていません。
音楽が鳴り、議論が起こり、人が集まる。

空間を常に“出来事”で満たしています。

3| 子どもを中心に据えた設計

泥田プールのイベントは象徴的です。

子どもが主役になる空間は、
親を呼び、家族を呼び、地域を呼びます。

そして子ども時代の体験は、
長期的なブランド記憶になります。

これは単なるイベントではありません。
未来の顧客を育てる文化戦略です。

4| BtoB顧客への接続

INAXライブミュージアムは一般公開施設であると同時に、

・企業顧客向け見学会
・工場見学との連動
・法人プログラム

も実施しています。

つまり、

  • 広報施設
  • 教育施設
  • 営業装置

この三層構造になっているのです。

一般来場者だけでなく、
企業顧客にも体験を提供する。
ブランドを“立体的”に伝えています。

5| 「待つ」のではなく「外へ出る」

多くのミュージアムは待ちの姿勢です。
しかしここは違います。

■  地域小学校への出張講習

焼き物の作り方を教える。
素材の魅力を伝える。

■  空港での泥だんご教室

中部国際空港内での開催。

これはブランドの“出張体験”です。

施設に来てもらう前に、
外部で接点をつくる。

その体験が、本施設への導線になります。

6| 地域連携という持続可能モデル

周辺の企業ミュージアムと連携し、
巡回ツアーを旅行代理店と企画しています。

単独で集客するのではなく、
エリア全体を目的地化する。

これは非常に戦略的です。

「点」ではなく「面」で集客する発想。
地域全体を文化圏として育てています。

7| 収集活動という思想

この施設の本質は、ここにあります。

・大阪万博ポルトガル館のマジョルカ風タイル
・日本郵船のテラコッタ
・丸栄デパートのモザイク壁画
・カゴメ本社のモザイク壁画

廃棄されるはずだった建築素材を引き取り、保存しています。

単なる自社製品展示ではありません。
日本の近代建築素材史を保存する拠点になっています。

保存活動そのものが文化投資なのです。

8| なぜ来場者が増えるのか

整理すると、強さは以下に集約されます。

  • 体験が多層的
  • 子どもを巻き込む
  • BtoB顧客も取り込む
  • 外部へ出ていく
  • 地域と連携する
  • 収集活動を継続する

つまり、
完成させない。動き続ける。

ミュージアムを「建築物」ではなく「活動体」にしている。

ここが最大の理由です。

9| 企業ミュージアム成功の本質

企業ミュージアムは、

・建物をつくれば終わりではありません。
・展示を並べれば完成ではありません。
・デザインが優れているだけでは機能しません。

重要なのは、活動設計です。

空間とプログラムと運営思想が一致したとき、
初めて来場者は増えます。

INAXライブミュージアムは、その実践例です。

企業文化を空間に翻訳し、
それを体験として流通させている。

だからこそ、支持され続けているのです。

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