南の島工房一級建築士事務所は無垢の木や土などの自然素材を使いながら、日本の風土や気候に適した気持ちの良い空間を目指しています。
また、日本の伝統的な技術を取り入れながら、安心で快適な建物・空間をつくっていきたいと考えています。
新築や企業の施設だけでなく古い建物のリノベーションも積極的に取り組んでおります。

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失敗しない自然素材の家づくり・空間づくりとは

初めから自然素材を使うことを意識すること

  家づくりにはいろいろ準備することが多いです。その忙しい中で自然素材の選定は最後にやればいいと考えがちです。自然素材を使うことは単にカタログから品番を指定することではなく、既製品のように一つ一つ決められているものは少なく、検討すべきことが多いので、事前に取り組む必要があります。
また、価格について初期段階で決まることは少なく。交渉をしていく必要があります。初めから意識することで取り組み体制もでき、計画・設計期間においても自然素材についてのいろいろなアドバイスが専門家から聞くことができます。施工やメンテナンスの時にトラブルをなくす必要があります。

ものに触れる

自然素材はカタログ化されていないものも多くあります。素材の質はやはりものに触れることが重要です。例えば、木材の市場に床柱をクライアントともに買い付けに行ったこともあります。なかなか素人では単段できる部分は難しいですが、専門家の意見や別の素材と比較検討することもでき、事前に自然素材を知る機会にもなります。

実際につくる人を決めていく

自然素材はどんな職人でも扱えるものではなくなりました。職人不足で、技術も低下している現象があります。大工さんといってもきちんと仕上げのできる人が少なくなっています。自然素材を実際に扱える職人を選定し、協力体制をとっていくことになります。予算の問題もありますが、クライアントの希望する建物のクオリティを把握し臨機応変に対応してくれる職人集団を選定していくことになります。クライアントと設計者と施工者が緊密に連携を取らなければ自然素材の空間はできないと考えています。

自然素材にこだわる理由

環境にやさしい素材である

 建築資材は、同じものを大量に消費する素材であることが前提になります。現代のような流通がまだ盛んになっていない時代では、身近にある素材が建材に利用され続けてきました。地球環境にやさしい素材は、単純に言えば地産地消が中心になります。昔から使われてきた素材をもう一度見直し、新しい形で再生することが、環境にやさしい建築になっていくと考えています。

五感に直接感じる素材である

自然素材には、本来持っている断熱性能や調質性能がある程度備わっています。その性質を最大限に活用することによって、自然の中にいるような気持ちの良い空間が生まれてきます。人工的な素材では味わえない「風合い」といったものが肌で感じられます。五感に訴えるような空間には、自然素材が最も適したものと考えています。

息の長い素材である

 クロスやペンキなどのコストを抑えた製品(新建材と呼んでいます)には長い目で見ると紫外線の影響もあり劣化していきます。一方、自然素材は、年月経つにつれて環境に合わせて表情が変わります。その変化は表面的なものにすぎず内部は何も損傷を受けていません。また伝統的な技術に根差した職人の技術を組み合わせることで強度・耐久性にも優れたものになっていきます。
そして素材と技術をベースにしたデザインをすることで息の長い建築になると考えています。

自然素材のメリットとデメリット

自然素材は、プラスチックや塩ビ製品などの新建材と比べて性能は高くないものが多いです。しかし、一つの素材で調質効果、断熱効果などいろいろな特性を兼ね備えています。それらをうまく組み合わせることで室内の環境を整えることができます。また人工的に作られたものではないので、再利用も可能であるし、また廃棄されるときは地球に負荷の少なく処理されます。 一方、自然素材は、ばらつきがあります。癖のある部分を含んでいます。例えば無垢の木には節があります。節は年月経つと乾燥してとれたりひびが入ったりします。素材は常に呼吸しているためで、完成してからも乾燥による収縮と膨張を繰り返し、徐々に落ち着ていきます。また、自然素材には、柔らかいものがおおく固いものをぶつけると傷がついたり、欠けたりします。シミや汚れにこだわる方は自然素材に向いていないかもしれません。自然素材のメリットとデメリットを見極めていくことがとても重要になっていきます

それぞれの素材の特徴


無垢床材

無垢のフローリングを考えるうえで重要なのは床暖の有無です。床暖房用の無垢のフローリングを選定することをお勧めします。板厚が15ミリを超えると床暖房の効きが悪くなります。通常のものより乾燥がしっかりされているので熱による反りは抑えられています。
次に考えるポイントはいた幅です。部屋の大きさに合わせて幅を考えます。小さい部屋では幅の小さいものを、大きい部屋では幅の大きいものを選定します。また部屋が変形しり曲がりが多い場合は継ぎ目が多くなるので幅の狭いものを選ぶと材のロスが少なくなりきれいに見えます。また、ヘリンボーンなどの特殊な床張を希望する場合は壁に近い部分の処理がうまくいくのかまた、材の取り換えを考えると汚れやすい部分に使用は控えたほうが良いです。
杉やヒノキなどは国産材も多くあります。節の多さが全体の雰囲気が変わっていくので事前に確認していくのが良いと思います。オーク、ナラ、ウォールナットやチークなどは外国産になります。外国産の広葉樹系のフローリングで注意したいのは、材の長さです。あまりに短いと目立ちすぎてしまいます。針葉樹系よりも表面が固いので傷がつきにくいです。
住宅用であればウレタン塗装よりはオイル仕上げの方が自然に見えます。作業場や体育館など床に負担の多いところではウレタン処理が有利になっていきます。つやを抑えたものが自然に見えます。

タイル

玄関回り、キッチン・浴室などの水周りに使用するのが多いです。まずは部屋の大きさ・形状に合わせてタイルの大きさを考えます。大きい部分には大きめのタイルを小さい部分や変形している部屋の場合は細かいタイルを選ぶのがおすすめです。床タイルのカタログには床用(外部用・内部用など)と明記しているので、基準にして選定してください。またモザイクタイルなどは目地が単位面積当たり増えてくるので滑り止めになり床仕様も可能になります。変形している部分にはモザイク系で対応できる場合と大きいタイルをカットして対応する場合があります。平面図にタイル割をして検討する必要があります。

タイルメーカのカタログで大まかに候補を挙げて、実際にショールームに行って確認します。設計段階で品番・色まで決めますが、なかなか判断できないときは現場で進行しているときに最終決定します。その時は価格の変更がないようにしたいと考えています。

 タイルは正方形を想像しますが、レンガをスライスしたことから生まれたタイルは2丁掛け(60*227㎜)小口タイル(60*108㎜)などと呼ばれ壁用のタイルとして普及しています。レンガタイルを使うと全体的に落ち着いた雰囲気になります。

タイルメーカなどが扱っている板状の製品はタイルと同様に施工していきます。タイルと異なり形状にバリエーションがあり、大判や変形などにも対応できます。タイルとおおきな違いとして、石材はカットしても表面と同じ素材が出てくるということです。キッチン台などでは石の小口が見せることで高級感を演出します。

また大谷石のようにブロック状を積み上げて塀にすることもできるので、外部などに使用すると植栽とも相性が良いのでお勧めです。

裏技ですが、割栗や砕石など下地材として使われる石材を仕上げにしていく方法もあり、自然素材ならではのバリエーションが隠れています。


土・漆喰

どちらも左官職人が行います。淡路島で若い時左官職人の師事を受けたこともあり、左官材料に関して日本の設計事務所の中で最も提案力のある事務所と思います。

漆喰は、石灰に「すさ」と呼ばれる細かい繊維と角又などの海藻ののりを混ぜ合わせたものです。外部でも使用できますが、軒などを出して直接雨風が当たるのは避けた方がいいです。白が基本ですが、顔料を混ぜることで様々な色の仕上げができます。2月の寒いとき、真夏の暑いときも酒匂は避けるべきで「白華」やドライアウトが生じてしまいます。

土壁は、畳のある和室と相性が良く、また様々な仕上げがあります。仕上げ専用と考えるのであれば石膏ボードの上に仕上げることもできます。本格的に土壁を考える場合は竹小舞から施工することもありますが、都会で行うには荒壁の搬入など設計段階から調整していく必要があります。土は、漆喰と比べるととても柔らかい素材です。襖や障子などと同様に丁寧に扱う必要がありますが、色あせることはなく長持ちする素材といえます。

きちんと耐震設計をすれば瓦屋根は最も耐久性のある素材で、金属板以上に機能的といえます。古い建物(1981年以前の木造建築)は耐震設計がされていないので、リフォームをする場合は構造の点検をまず行います。

瓦は、金属板と比べ、太陽光の反射、熱抵抗、雨音に対する静音そして耐久性などが優れています。屋根は最も外部の環境の影響を受ける部分です。屋根部はシェルターとしての基本的な建物の品質を決める部分です。

屋根は、外観のデザインにもかかわる部分なので屋根材の判断はとても大切です。また近年では、ソーラーシステムや天窓を付ける場合、瓦は雨仕舞が悪いのであまりお勧めしません。


モルタル掻き落とし

一見土壁のようにように見えますが、このように雨がかかる外壁では土は塗れません。モルタルに顔料を使い土風に仕上げた掻き落としという技法です。昔はよく見かける表現ですが、薄塗ばかり流行っている現在ではほとんど見ることはできません。
近くに寄ってみるときれいな土の粒がは入っており、とても楽しい仕上げになっています。
自然素材といっても様々な素材と技術があります。全体のデザインとのバランスとコストを見極めて判断していかなければ決して成功しません。一つ一つの判断が最終的に長持ちする人々に愛される建物になっていくものと感じております。
(*この壁は親友でもあり、同士でもある左官職人 久住有生氏によるものです。)


hiki takuto

建築家紹介  日置拓人 (ひきたくと)

私は、建築学科修了後、淡路島の左官職人に師事し、伝統的な土壁の仕事や職人の現場を視察して、建築のものづくりを体感してきました。
通常の設計スタイルにこだわることなく建築の仕事をお手伝いしてきました。
ある時には現場監督であったり、ある時には現場作業員のような立場であったりしながらリアルな建築を見つめてきました。
伝統的な日本のものづくりの建築技術は、手で扱える道具を基本に展開しているものが多く対応能力がとても高いと自負しています。その技術を生かした建築を常に作りたいと考えています。
大量生産による建材が市場にあふれている時代、ひとつひとつ丁寧にものづくりを進める建築現場が少なくなっています。
世界が今、脱炭素化を目指していく中で、自然素材、とりわけ木や土を中心にした建築が再評価されています。日本には建築に活用できる木々や土がたくさんあります。それらを活用して新しい社会に役立つ建物・空間を創りたいと考えています。

略歴

1993年 早稲田大学理工学部建築学科卒業
1995年 イタリア政府給付生ローマ大学建築学部留学
1996年 早稲田大学理工学研究科建設工学修士修了
1996年 左官職人久住章氏に師事 ゲストハウス製作
1999年 一級建築士取得    南の島工房設立
2000年 明石高専非常勤講師
2001~2004年  明治大学理工学部建築学科兼任講師
2007年~2010年 早稲田大学理工学部建築学科非常勤講師
2012年および2015年 越後妻有トリエンナーレ 大地の芸術祭 「モグラの館」会場構成及び作品制作

受賞歴

淡路島ゲストハウス2
1999年 ・第15回*吉岡賞 (現在 新建築賞)

□ INAXライブミュージアム 土・どろんこ館
・2007年 ・第12回人にやさしい街づくり賞
・Good Design(グッドデザイン)賞
・第39回 中部建築賞
・2008年 ・第15回愛知まちなみ建築賞

□ 建築陶器のはじまり館
・2013年 日本建築学会 建築業績賞

□ つくるガウディ展
・2017年 第12回西洋美術振興財団賞 文化振興賞


対象としているクライアントの方

  • インテリアや建築デザインに興味があり積極的にものづくりに参加したいと思っている方
  • 自分の見える形で建築をすすめていきたい方
  • 好みのデザインをすすめていきたいと考えている方
  • 自分なりのリフォームや新築を目指したいと思っている方
  • 自然素材に興味があり実際に使用した家づくり・建物づくりを行いたいと思っている方


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